「グレッグ、あなたに、いつか、おねがいしたいことがあるのです」
それは、あの独立の日から3ヶ月後のことだった。
そして、それぞれ別の道を歩むと決めた、別れの日でもある。
今まさに、去ろうとするグレッグの背中に声が掛けられた。
きいてもらえませんかと、おっとり、そして緩く首を傾げてアヴリルは微笑む。
「今、じゃ駄目なのか」
「はい。いつか。
おねがい、できますか?」
別れの前に、いつでも頼みを聞く機会はあった。時間が差し迫っているわけでもないから、単純なことであれば、直ぐにでも出来る。
逆に考えれば。
単純なことではなく、尚且つ、今言う必要があることで。
そして、今叶えてはならないか、あるいは今は叶えられないこと、なのだろう。
「解った。いつか、聞こう」
「はい。ぜったい、きいてくださいね」
彼女はふわり、と笑んで。
「グレッグ、またな!」
「元気でね!」
大きく手を振るディーンたちと共に、見送った。
それから何度も、会い、別れを繰り返した。
同じようにこの星の未来を考える仲間だ。
離れていてもいつか巡り会う。
この日も必然的に集まり、そしてぽつりとアヴリルが言った。
「覚えていますか?」
「何をだ」
「『お願い』のことです」
「……ああ」
あの時はディーンもレベッカも居た。
今はいない。
以前まではグレッグや艦長のような大人の手助けを必要としていたが、今はもう立派に、一人でも歩めるようになったからだ。
「お願い、聞いて貰えますか?」
「ああ、いいぜ」
懐かしさが胸を掠め、そして頷く。
「わたくしの伴侶になって下さい」
「……なッ!?」
「ディーンも、大人になりました。もう充分でしょう?」
アヴリルが詰め寄る。ほとんど反射的にグレッグは後退り、問い返す。
「な、何が充分なんだ」
「充分、待ちました。ディーンが大人になるまで」
そして、わたくしも。
と、アヴリルが言う。
今じゃない、いつか。
4年越しの願いは。
「聞いてくれると」
壁まで追い詰められ。
――――逃げ場など、なかった。
BGMに「愛・おぼ○ていますか」でも掛けとくとなおよし
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