ようやく目蓋が重くなって、眠れそうになったというのに。
グレッグは、違和感だなんて生易しい言葉で片付けられない明瞭な不快感に、眉を顰めた。
一体いつの間に近づいて来ていたのか、距離をとって寝ていたはずのチャックが真横に居る。
この場合、ただ寝相が悪いんだなで済まされない。なぜなら、手がもぞもぞとグレッグの胸部をまさぐっているのだから。
ある意図を持って動き回るチャックの手をたどって、持ち主を振り返る。
狸寝入りなどではなく、本当に寝ているのだから始末に負えない。
あまりの気持ち悪さに、このまま放っておくことも出来ず、グレッグはチャックの手をぺいっと投げ捨てるように払い除け、渋々立ち上がり移動する。
ディーンを挟んでチャックとは反対側の位置へ。
再び寝転がり、目を閉じ睡魔が訪れるのを待つ。
けれど。
「う、ううー……ん」
ごそごそと動く音と、チャックの声がする。
嫌な予感がして、グレッグは片目を薄く開けて様子を窺う。
見ると、チャックは上半身を起き上がらせていた。そして、きょろきょろと周囲を見渡し、グレッグを見つけると、のそのそと近寄って来て、先ほどまでと同じグレッグの背後を取ると、まるで何事もなかったかのように、また安らかな寝息を立て始めた。
「…………」
グレッグは。
全てを諦めて目を閉じた。
諦めるのはまだ早いよ、グレッグさん!
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