今そこにあるピンチ3




 ようやく目蓋が重くなって、眠れそうになったというのに。
 グレッグは、違和感だなんて生易しい言葉で片付けられない明瞭な不快感に、眉を顰めた。
 一体いつの間に近づいて来ていたのか、距離をとって寝ていたはずのチャックが真横に居る。
 この場合、ただ寝相が悪いんだなで済まされない。なぜなら、手がもぞもぞとグレッグの胸部をまさぐっているのだから。
 ある意図を持って動き回るチャックの手をたどって、持ち主を振り返る。
 狸寝入りなどではなく、本当に寝ているのだから始末に負えない。
 あまりの気持ち悪さに、このまま放っておくことも出来ず、グレッグはチャックの手をぺいっと投げ捨てるように払い除け、渋々立ち上がり移動する。
 ディーンを挟んでチャックとは反対側の位置へ。
 再び寝転がり、目を閉じ睡魔が訪れるのを待つ。
 けれど。
「う、ううー……ん」
 ごそごそと動く音と、チャックの声がする。
 嫌な予感がして、グレッグは片目を薄く開けて様子を窺う。
 見ると、チャックは上半身を起き上がらせていた。そして、きょろきょろと周囲を見渡し、グレッグを見つけると、のそのそと近寄って来て、先ほどまでと同じグレッグの背後を取ると、まるで何事もなかったかのように、また安らかな寝息を立て始めた。
「…………」
 グレッグは。
 全てを諦めて目を閉じた。





諦めるのはまだ早いよ、グレッグさん!


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