【注意】
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その笑顔を向ける相手が女なら、頬を染めただろうに。
あるいは。
その笑顔のあとに続く言葉が、優しかったなら、笑みを浮かべられただろうに。
「ボクが、殺すよ」
事も無げに言う。
「キミが死ぬときは、ボクが殺してあげる」
甘ったるい口説き文句を吐くように、うっとりと。
目の前に座る男は、言った。
好きなのだと囁き始めたのはいつだったか。
きっかけが何所に転がっていたのかはっきりと覚えていないが、確か、旅をしていた頃に既に何度も口にしていたように思う。
その感情は思い違いだ。間違いだ。勘違いだ。
何度もそう説いた。
そうして何年経っても、歪んだ感情からコイツは抜け出せない。
俺に出来るのは否定することだけだ。
チャックが、過ちに気づけるように。
それでも繰り返す。
似た問答を。
どういう話の流れだったのか、酒を飲んで互いにほろ酔い気分を味わっている最中のことだった。
ふと、チャックの空気が変わる。
ああ、またか。
また、あの繰り返し。
折角良い気分だったというのに、水を差されたように思った。これさえなければ、差し向かいで飲むことも楽しめる相手なのだが。
そして、女に向けるような甘い表情と息を交えて、チャックは囁く。
「グレッグが、さ。
死ぬときは……ボクを側に置いてよ?
ボクが」
一口、舐めるように酒を啜り。
「ボクが、殺すよ。
グレッグが死んでしまう前に、殺す。
キミが死ぬときは、ボクが殺してあげる」
喉が、乾燥する。
アルコールのせいだと、思いたい。
けれど、ぞっと冷える手足がそれは違う、と警告していた。
「……馬鹿な。
お前にヒトが殺せるはずがないだろう」
ヒトの死の重みも、痛みも、知っているお前が。
「殺せないよ。
だけど、同じ死ぬなら、ボクが殺したい。
グレッグが、最期に目にするのがボクだったらいいのに、って。
誰かに殺されてしまう、なんて想像するのも嫌だ。
老いや病気に任せるのも。
ボクが、この手で……それから」
それから、と言ったものの、続きはチャックの口から出ることは無かった。
ただ、口の端を上げて、ゆるりと笑む。
わずかに、呑んでいた酒の色が端に残ったままで。
「お酒、まだ残ってるよ?」
瓶を軽く揺らす。一杯分以上はありそうな音を立てる瓶に、俺は頭を振って拒絶した。
フルボディの渋みに、今は耐えられそうも無い。
それなりに補足。フルボディ=赤ワインの辛口。
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