1(事後)
2(努力)
3(最中)
4(狂気)
5(にょた)
1
「ゴメン、ね?」
「……謝るくらいなら、初めから、するな」
「うん、だから」
我慢するなんて出来なくて。
だから、しないでいられるはずもなくて。
「ゴメンね」
乱れた衣服と、余韻に熱を帯びた肌。
最中の嬌声はまだ耳の奥に残っていて。
息を整えながら、グレッグは言った。
「何度目だ…?お前、ちゃんと反省してるか?」
「してる、してるよ」
笑って返したのが悪かったのか、ゴツン、と軽く拳を当てられた。
わずかに痛む額に手で癒しながら、ボクの下に組み敷かれたままのグレッグを見下ろす。
この分だと次も許してくれるだろう、と思って、口の端を上げて。
2
「ボク、男の魅力は包容力だと思うんだ。って言っても、あったかく包みこんでキュウキュウ締め付けるのはグレッグの役目だから。ボクの言うのはそういうのじゃなくて」
「下の話は聞いてねえ。で、どうするのか知らんが俺を巻き込むなよ」
「グレッグを甘やかしてみようと思うんだけど」
「だから、巻き込むなと……。第一、お前に頼る気なんかしねえな」
「え、しない?」
「ああ、全くな」
「困ったな……」
「……今困ってんのは俺のほうだと思うんだが」
「うーん……なら、これで」
「!!」
「どう?ドキっとしたかい?」
「……そういうことは女にするんだな」
グレッグの右手を取り、その甲に唇を落としたまま上目で尋ねるチャックに、げんなりと答えた。
「ダメだった?」
「寒気がする」
3
「グレッグ、ちょっとぐらい協力してよ。
もう少し足開かない、と挿れづらい、よ」
くぷ、と縁がめり込み、先端を飲み込んだだけで、そこから先へは進めない。
体格も経験もないと、上手くいかないことだらけだ。
早く、根元まで埋めて、抜き差しして擦り上げたくてボクのがびくびくと脈打つ。
なのにグレッグの足は中途半端に開いたままで、それから開こうともしてくれない。
「グレッグって、ば」
抜けないように気をつけながら、軽く動かす。
と、グレッグの身体が大袈裟なほど、跳ねた。
それまでは抵抗されるけれど、ここまで来ればグレッグだって愉しんでくれるのに。
なのに、いつも非協力的だ。
「足広げるだけだよ?そしたら、もっと気持ちよくなれるんだからさ。
ほら、大人しくくわえるだけじゃなくって、さ」
「……の」
グレッグが呟く。
いや、ボクに向かって毒づいた。
「俺の……ッ、最大限の妥協を何だと思って……ッ」
もっと妥協点、引き下げて欲しいな、なんて言ったら後が怖い……ような、気がした。
4
「いいヤツだな、お前は」
その言葉に、痛みなんて今更感じはしない。
「そう?普通だよ」
普通のふりして、普通に答える。
グレッグは、珍しく柔らかな笑みを浮かべたかと思うと、それっきり何も言わずに、ただ、さっきと同じように視線を前へと戻した。
出会った頃のような、ひりつくような緊張はなくなっていて。
(それは復讐が終わってしまったから)
元はそうだったのだろうか、纏う空気が柔らかくなった。
(年月を経て、ボクが居ることに慣れたのかもしれない)
さっきみたいな表情も、見せてくれるようになって、ボクは。
かわいそうに、としか思えなくなった。
かわいそうに。
知らないから。
キミの復讐が終わっても。年月が経とうとも。
ボクの歪んだ優しさしか、キミは受け取らないから。知らないから。
ボクが、人間性の良し悪しで言えばきっと普通。
でもキミだけには特別優しい。
そうでもしないと。
この苦しみを伴った優しくて残酷な甘い世界がたやすく崩れ堕ちる。
キミを壊せば、全部終わる。
ヒトを狂わせるなんて簡単なこと。
この感情を自覚したあの日、ボクが狂ったように。
5
どういう理屈かわからないけど、グレッグが女の人になりました。
「……それにしても……大きいよね」
「別に好きで大きいわけではないんだが」
「え?重要でしょ?胸が大きいのは。それに大きいほうがボクの好みだし」
「…………別にお前の趣味は聞いてない」
「と、ところでさー……グレッグ?
一つ、お願いがあるんだけど」
「……………………何だ」
「触らせてくれない?
おっ…………胸を」
「…………」
「ちょッ、そんな冷たい目で見ないでよ!?
仕方ないじゃないか!ボク触ったことなんてないし、興味があるんだよ。どんな感じなのかさあ!
グレッグだって男ならわかるだろッ!?」
お願いお願いと拝み倒しまくるボクに、溜息ひとつついてグレッグは言った。
哀れそうな眼差しとセットで。
「……少しならな」
「あ、ありがとう……!!じゃ、じゃあ早速……」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいッ!」
「…………謝れば済む問題か?これは」
「え、なら責任とっていいの?」
チャックばかりがいい思いをしているのが微妙に腹立たしい(笑)
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