脅迫
ボクらは普段、団体で行動している。
と、いうことは、ちょっとムラっと来たからって即座に行動にはうつせない。人目があるから。
こればっかりはどうにもならないことだ。
でもボクだって枯れたお年寄りでもないし、むしろヤりたい盛り。
第一、定期的に抜かないと体に悪いんだから、それなら一人でするより二人のほうがいいに決まってる。
「ん……っく……」
張った胸を片手でまさぐり、もう一方の胸の先端を軽く歯で噛んでみる。
それだけで、胸を反らし、グレッグの中心が熱を持つ。
初めのときも、想像してたより感度がいいかも、とは思ったけれど、今はもっと良くなってる。
熱い吐息を吐き出し、熱を逃がすグレッグに更なる熱をと、膝を割った先の中心部に手を添える。
ゆるゆると淡い刺激を手で与えながら、ぺろり、と肌の色と異なる部分全体を舌で舐め上げた。
「…………ッ」
「やらしー色してる……」
ぷくっと膨らんだところが唾液で濡れて、ぬらぬらとした光を返す。
ちろちろと舌先で弄くりながらグレッグの顔をみれば、火照った頬と濡れた瞳でボクを見ている。その顔に、ぞくっと、背筋に寒気に似た物が走る。
似てはいるけれど、それは全然違う。
その証拠に、ボク自身が硬く張り詰めている。
そんな顔されると、弱い。
普段の落ち着いた表情じゃなくて。
他の誰でもない、ボクだけしか見てなくて。
その上、たまらないくらい嗜虐心をそそる。
もっともっと、泣かせてしまうくらい苛めてしまえたららいいのに。
……でも、悲しいかな、そんな時間がない。
今日だって、ぎりぎりで時間が取れたんだ。
暴走しそうな心を抑えて、また、行為に戻る。
音を立てて胸の突起を吸い上げると、グレッグの体は弓なりに反り返り腰を浮かせた。
手のひらに感じる、どくどくと熱を伝える脈動。
それと、とろりと、先端から零れる白濁。
グレッグのぴんと尖った胸を舌で転がし、はしたなく液を垂らすソコを上下に扱きながら、ボクは問いかける。
「グレッグ……このままイく?それとも……ボクのコレでイきたい?」
ぎゅっと、ボクのをグレッグの体に押し付ける。
その問いに、わずかに声を洩らしただけで、グレッグは何も言わず、ただ頭を振った。
そんなんじゃ、何に対してのどんな返事かもわからない。けど。
「グレッグの、このひくひくしてるところに挿れてもいい?」
ボクの先端から感じるそこは、誘うように蠢いている。
先走りを塗り込むように腰を揺らすと、グレッグの腰も無意識に揺れ動いていた。
求める、みたいに。
「グレッグって、ホント、やらしーよね……」
無言で強請っちゃうなんてさ。
グレッグを、上から見下ろしながら言う。
「ン……う……ッ」
かみ締めた、唇からどうしようもなく、声が出てしまう瞬間。
ぐちゅり、と濡れた音がして、ずぶずぶとグレッグの中にボクのを押し込んでいく。
「う……あぁ……」
鍛え上げられた、逞しい身体を蹂躙するこの瞬間が心地良い。
全部入ったところで、一気に引き抜く。
大きく開いたグレッグの足の間で、液が途切れることなくぽたぽたと雫を垂らす。
その向こう側にある瞳に、快感と理性とがせめぎあってるのがみてとれた。
内部を穿つ行為を繰り返すたび、そのふたつが次第に溶け合っていく。
……ホントに、残念。
「ンぐ……ッ、は……ッ」
断続的にしか聴こえないのは。
以前のような自由時間なんてあれから、ない。
少しくらいなら時間は無理矢理作れても、ほぼ一日中、グレッグとふたりっきりだなんて僥倖には、全然預かれなかった。
大体、グレッグはいっつも声を押さえちゃうから、極限まで持ってかないと声なんて聞けないし。
時間が限られてることと、喘ぎ声が聞けないこと。
たとえば、どっちかだけでも問題がクリアできてたらマシだったのに、どっちも無理だっていうのは、かなり、悶々としてしまう。
そして。
ちょっと間が開きすぎて、そろそろ欲求不満が暴発しそうな頃に、それは起きた。
湯上りの上気した肌が艶かしい。
……こんなことですら、どきっとしてしまうのはグレッグがいけないんだと思う。うん。グレッグのせいだ。
だからってちゃんと服を着込んで欲しいかというと、そういうわけではない。
男心は複雑だ。
「ほら、ディーン入って来い」
「ああ、解ってるって」
ベッドの上から降り、下着をひっつかむとそのままディーンは、グレッグの脇をすり抜けお風呂へと直行……するかと思いきや。
「あッ!グレッグ」
途中で引き返して、グレッグの背中に向かって指を伸ばした。
「髪がついてる」
ぜ、と語尾につくはずだった音がかき消される。
ディーンの指が、グレッグの背中に触れた、途端。
「ひ……ッ」
なんて声を、グレッグが上げたから。
「あ……ごめん、こそばかった?」
「い、いや。すまんな」
いつもの癖でグレッグは俯いて表情を隠そうとするけれど、帽子もない今には意味がない。
お風呂で温められただけじゃない、それ以外の理由でグレッグの顔がわずかばかり赤い。
いくらディーンがディーンでも、様子がおかしいのは気づいたのだろう。首を傾げ、グレッグを覗き込もうとしていた。
でも。
「ディーン、お風呂早く入っちゃいなよ」
「そ、そうだな。明日も早いからな。
とっとと入れ」
「……うん、そうする」
まだ疑問符が後ろに付きそうだったけど、言葉に押されて浴室へと歩いて行った。
パタン、と扉の閉まる音がする。
これでいい。
これで、本題に入れる。
「……チャック、さっきは」
「グレッグ、アレはどういうことかなあ?」
立ち上がり、グレッグの手首を握る。普段より高い体温。
反射的に手を引こうとする、その手を握る力を強くする。
「ボクとするときは声抑えてばっかりなのに、ディーンに触られただけで喘ぐなんて」
明らかに、あれは感じてる声だった。
ぎゅっと、握った手のひらから動揺が伝わる。
「ンなことしてねぇッ」
「じゃあさっきの声はなんだって言うんだい?
……ずるいじゃないか」
シャツに覆われていない肌に、唇を寄せる。
石鹸の匂い、と舌の先でグレッグの肌の味がした。
「チャック、やめろ……ッ!!」
引き剥がそうとする腕を押さえ、側で囁く。
「……大声だしちゃダメだからね?
暴露されたくないんだろ。大人しくしてなよ」
お風呂場にはディーンが居る。
大声や騒ぎがあれば飛んでこれる距離だ。
グレッグの抵抗が、止む。
「そうそう、大人しくしてて。ちゃんと途中で止めるから。
……グレッグが喘ぐのは大歓迎だけど」
ボクだって、この状況で最後までするつもりはない。
さっきディーンが触れた場所に手を伸ばす。
たしか、肩甲骨の間。
「……ッ」
密着した肌から伝わる鼓動。それに少し上から降る切なげな吐息。
それはボクを興奮させるには充分で、けれど、不満にもさせる。
「ディーンのときは、あんなに素直に声を出してたのに……ボクには聴かせてくれないんだ?」
仕方ないから、背骨に沿って指先で撫でるように刺激を与えながら、鎖骨に舌を這わせる。
そうしてもグレッグは息を洩らすだけで、さっきみたいな明確な喘ぎ声は出さない。
挿れるわけにもいかないので、背を下った更に下は、直にじゃなくて布を隔てた外側から。手のひらも指も使ってまさぐる。
「……誰の」
吐息に紛れて、言葉が聞こえる。
喘ぎ声ではないけれど、感じてるふうなのが見え隠れしているその声に、少しだけ気持ちが治まる。
「誰の、せいでッ……あんな……、が出るようになったと……ッ」
「誰のって、ディーンのせいじゃないか」
あの時、グレッグに触れてたのはボクじゃなくてディーンなのは誰がどう見たってわかることなのに、なんでわざわざ言うんだろう?
蒸し返さなくてもいいのに。
触れて、吐息を聴いて、ようやく沈静しかけていた不満がまた顔を出す。
グレッグの首元を、盛り上がった胸元を舐めながら、ボクは呟く。
「いいよ、もう。
こうやってグレッグに触れるのはボクだけだって知ってるし。
こんなことされてるなんてディーンは知らないし。
ましてや、グレッグが中出しされるの大好きだなんて、ね」
ゴン、と音がするのが先か、ボクの目の前がチカチカと点滅していた。
その衝撃に、思わず頭を抱えてうずくまる。
「なんだ!?どうしたんだッ!?」
「…………今から外へ遊びに行くなんて言い出してな」
「ええー?チャック、そんなの良くないぜッ!」
早寝早起きは健康の第一歩だ、とディーンが言うけれど、その表情が涙で滲む。
グレッグの拳骨は頭に響くなあ……。
まあおかげで下は大人しくなったけど。
でも、未だくすぶったままの欲求があるのは自覚していた。
……明日、時間とれればいいんだけど、なんて考えていた頭にディーンの声が聞こえた。
「あれ?どうしたんだ、グレッグ」
見れば、グレッグはベッドから遠ざかってどこかへ向かおうとしている。
背中越しに、グレッグが答えた。
「汚れたから、もう一度入ってくる」
…………汚れたって、ひどくない?
「……ッ、グレッグ、出すよ……ッ!!」
声を掛け、限界まで張り詰めたボクのソレをグレッグの奥まで押し込む。
前立腺をごりごりと押してやれば、グレッグのほうが先に耐え切れず、白い液を吐き出した。
それと同時にボクも全体をやわやわとうねって刺激する動きに促され、そして根元をきゅうっ締められて、押さえ込んでいた欲望が決壊する。
どぷどぷとグレッグの中に、溜め込んでいた熱を放つ。
「うぐ……ああああ……ッ」
自らも放出しているせいもあるだろうけど。
ボクに注がれながら、グレッグは隠すことなく濡れた声を発し続けた。
その表情は、普段の彼から想像も出来ない快楽に緩んだ顔。
その表情をみて、ようやくグレッグを手にした気がした。
最後の部分の解釈はご自由にどぞ。
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