指の先のちいさな爪の上を、桃色が飾っている。
 それは肉の色ではなく、染められた鮮やかな色彩。
 塗り終わったマニキュアのできばえを確かめるように、両手の指を広げていた。丸みを帯びた、自身とはちがう形をした指。
「レベッカ」
 わずかに漂うシンナーの匂いに、鼻を鳴らしながら彼女のもとへ近づくディーン。
 レベッカは、座ったまま彼を振り向いた。
「なに、してるんだ」
「マニキュアを乾かしてるのよ」
 ちょっと失敗したかも、と続ける。
「どうして」
「だってこれじゃ何も持てないもの」
 乾くまで暇だなあ。
 桃色の指先を伸ばしながらレベッカは嘯く。
 今、さわったりしたら怒られるだろうことは簡単に予想がついた。つやつやときれいな爪の色に興味はあったけれど。
 だから。だけど。いまのうち。
 手が使えない今のうちに、後ろから抱きしめる。





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