爪先にともる
小さなまるい爪に人工の色が乗っている。
「どうしたんだ、コレ」
指差して問えば、レベッカは照れたように笑って、その両の手をひろげディーンに向かって見せた。
「マニキュア買ったの。
キレイでしょー?」
とろっとした色で光を跳ね返す桃色の爪先を掲げるレベッカに、ディーンはふうん、と気のない返事をする。
思っていたとおりの反応だったのだろう。レベッカは怒りだしたりしなかった。
「ま。そんなものよね」
「なんだよ」
その口調は呆れた風でもなかったが、どことなく引っかかりを覚えてディーンは目線をレベッカに向ける。
「男の子だもん。お化粧のはなしなんて、聞いてもつまらないでしょ?」
「そりゃ、全然わかんないけどさ。キレイなのかどうかぐらいはわかるって」
桃色の光沢にまた、目を戻してディーンが言う。
「で、ご感想は?」
細くてちいさな手。丸いつま先の桃色。
「キレイっていうか……かわいい、かな」
言い終えて。
ディーンの頬に熱が集まる。
なに、言ってんだ、オレ。
自身の口走った一言に、なぜか動揺するディーンをどう捕らえたのか、レベッカは苦笑した。
「そうだね。かわいい、で合ってると思うよ」
誇らしげに自分の指先を眺めるレベッカと、その横で、違うんだけど何が違うのか解らないとひとり煩悶するディーンの微笑ましい姿がそこにあった。
そんな、ある日のカポブロンコの昼下がり。
平和でなにより
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