あまおと、つよく
死にたくなくて、必死で逃げ出した。
足の裏が痛い。きっと血が出てる。
けれど足が上げる悲鳴よりも、追ってこないで、私を苛めないでと心が上げる悲鳴に急かされて懸命にひた走る。
きっと死んでしまう。
止まったら、ころされる。
雨が降っても。
足をぬかるみに取られても、止まらない。
膝ががくがく震える。
もう歩いてるのか走ってるのか分からない。
呼吸なんて生易しいものでなく、喉の奥から血が滲むような勢いで咳き込んだ。
大きな影が追いかけてくるよ。
大きな手が振り下ろされるよ。
心に巣食う大きな怖いひとたちに怯えて走る、走る。
小振りだった雨が次第に土砂降りになって、地面の土さえ押し流していく。
雨が耳鳴りのように響く。
真っ暗な闇の中で、街灯を見つけた。
思わず安心してへたり込む。
光に縋るように身を寄せて、ふと、別の村が近くにあることに気づいた。
あたたかな家のひかり。
村の外の街灯にすがる私。
初めて、孤独を知った。
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