「あれ、グレッグ。頬っぺたのとこ、ケガしてるよ」
とんとん、とチャックは自分の顔を使って指し示す。
指摘されて、その場所を拭って見れば、指先に血が滲んだ。
さっきの戦闘のときかな、と言いながらチャックは荷物を漁る。ヒールベリーを探しているようだが、グレッグはそれに軽く手を振ってみせた。
「必要ねえ。こんなもん、放っときゃ治る」
チャックに背を向け、話を断ち切った。
つもりだったが。
「ちょっと待って」
声を掛けながら、チャックはグレッグの襟を後ろから引っ掴んだ。
何だ、と問い返す暇すらなく、彼が傾いた拍子に、その傷口を舐める。さらについで、とばかりに頬を辿って耳介にかぷ、と噛み付いた。
途端にぞわわと背筋に寒気が走る。
「……テ……ッ!」
反射的に攻撃を仕掛けようと体が動く。けれど手は宙を切るだけで、相手まで届かなかった。
「消毒だよ、消毒」
「いらねえって言っただろうがッ!!」
それに耳にケガはない。
甘噛みされた部位を片手で隠すように押さえるグレッグを見て、チャックはああ、とひとつ頷く。
「耳弱い?」
話を聞け、この野郎。
しかも親切のつもりだったりする
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