自分と相手の息の音と。
それから湿った音が鳴り止まない。
でも、全然嫌じゃない。
グレッグも、最初の頃の余裕なんて無くして、ボクにされるがまま息を落とす。
それでも声だけは出すまいとはしてるけど、時折、堪え切れずに引き攣ったような悩ましげな声が漏れ聞こえる。
中程まで挿入していたモノを内壁に押し付けると、やわやわと奥へと誘う動きを見せた。その収縮に合わせて腰を進める度に、結合部でぢゅぶぢゅぶと淫猥な音を立てる。
中に放った液が入ってくる質量に押し出されて、どろりと音がしそうなくらいだ。
「……うわあ、ドロッドロ」
繋がったところから溢れる白濁を見ながら、呟く。
挿れてからずっと抜かずに出してたから、結構な量だ。それに、グレッグのも垂れてきてるわけだし。
「グレッグ、凄いよココ。本当に赤いしぐちゃぐちゃになってる」
いやあ、なんかもう、自分の功績だと思うと、嬉しくて自慢したくなる。
自慢する相手はグレッグしかいないのだから、呼び掛けて見せてあげようと思ったのに。
「……ッに、言っ……」
身体を震わせ、息も絶え絶えになりながら、彼は言った。
でも意味がわからない。
「?なに、何て言ったんだい。
それより、ねえココ……」
「……ンなこといちいち言うなと言ったんだッ……!」
さっきと絶対台詞が違うと思うんだけど。
「……見たくないの?」
「誰が見たがるんだ、そんなモノ」
憮然とした顔で睨まれる。
ボクは見せたいんだけどな。だってそれぐらいにやらしくって、たまらない光景なんだから。
ちえ、っと舌打ちしたあと、ゆっくりと抜き差しを再開させた。
「…………ンッ……」
殊更、さっき覚えたばっかりのグレッグのイイ所ではゆっくりとボクの先端や括れが当たるよう、なすりつけながら通り過ぎる。
腰を動かし、同時に手で彼の盛り上がった胸の突起を指先でこねくり回す。
一日で結構上手くなった、と思う。
初めてした、と言っても一昨日の話なんだけど、その時よりも反応をひきずり出せるようになってるし、性感帯もそこそこ把握できた。
奥をぐりぐりしながら、ちょっと強めに突起をつまみあげる。
「ふ、ク……うッ」
反射的に、グレッグはびくびくと身体をしならせた。
こうされると弱いのは今日のうちに学んだこと。
目をぎゅっとつぶって、それからそそり立つグレッグのアレがさらに膨張する。
シーツの上に沈んだ身体がかわいそうなくらい震えてる。限界が近いみたいだ。グレッグの中が小刻みに収縮を繰り返し、ボクのを搾り出そうと動きだす。
ボクも終わりを目指して、動きを早めた。
胸にやっていた手を足に、そして筋肉で張った太股を抱えて動きやすくする。
「……ッ、……ゥあッ……やめッ……」
断続的に喘ぎ声を洩らす。声を殺すだけの余力はないみたいで、目も、虚ろになってきてる。
「……グレッグ……ッ」
ボクの理性なんてとうにぶっ飛んでいる。
けど、こういう思考は残っていたみたいで、気があっちに向いているうちに、抱えた足のまだ柔らかそうな部分を狙って吸い付いた。薄っすらと、赤い斑点が残る。
「ック……」
グレッグの中心の窪みに爪を立てて引っ掻くと、 短い、小さな言葉で宣言したとおりに、グレッグは中に溜めていた液体を自分のお腹の上に吐き出した。
イったときにぎゅうっと中がきつく締まって、続いてボクもまた、欲を放つ。
彼のお腹の中にとぷとぷと音を立てて精を注入する。抜いたりしたら出てきちゃうからやっぱり抜かないまま。
しばらく放出したあとの余韻に浸り、グレッグの胸の上に身体を預けて息を整える。
ボクの息がくすぐったかったのか、身をよじって逃げようとするグレッグを腕で押さえた。
「ダメだよ。まだ、終わりじゃないんだから」
両腕を押さえつけ、萎えた自身で繋いだ状態で上から見下ろす。
するとグレッグは良くないものを聴いたような顔をして、気の抜けた声を発した。
「まだ、するつもりか……?」
「そうだけど?」
「…………もう、いい加減にしてくれ……」
げんなり、と呟く。
カーテンの隙間から差し込む光の色はもう昼のそれではない。
朝からずっとずっとしてる。
けど。
「まだ足んないんだもん」
今は元気ないとはいえ、ちょっと揺さぶればすぐ元気になる。
若いのだから致し方ない。
さて、続きを。と、グレッグのあごに手を掛け、軽く口を合わせようとしたら、嫌がられた。
避けられた姿勢のまま、グレッグは言う。
「あ、あんまりがっつくと身体によくないぞ」
「へいきだって。それより溜め込むほうが身体に悪いよ」
何か、突っ込みをいれたそうに口をぱくぱくさせたが、結局それは言葉にならなかった。
替わりに別の言葉が飛ぶ。
「お前は良くても、俺はもう付き合いきれん」
「そんなこと言って。まだちゃんと締まってるよ?」
「そういう話じゃないッ!
こういう行為はお互いの意思を尊重しながらやるもんだ。
若気の至りにしてもほどほどにしろッ!!
使い潰す気か!?」
組み敷かれているというのに説教を始めるグレッグ。ちょっと、自分の立場トカ状態トカわかってるのかな、と思える。
でも、そう言われると痛い。
使い潰す、だなんてそんなつもりは毛頭ないし。大事にしたいと思っては、いる。実現できているかどうかは……今のグレッグのセリフで痛感させられたけど。
しばし、葛藤する。
結論。
「……あと、一回だけ。それで終わりにするから、さ。
ダメ?」
「本当に、あと一回だな?」
「うん。約束する」
了承の代わりに、グレッグはボクの頭を引き寄せて軽く口を合わせた。
グ、グレッグからしてくれるなんて思わなかった……!たった、それだけのことなのに、ものすごく興奮してしまう。
だけど、あと一回しかないんだから、我慢しろ、ボク。
今度はボクのほうから唇を寄せ、深く口付ける。
グレッグの口内を思う存分堪能したあと、身体を離す。
勿体無いけど、一旦抜いてしまう。押し止めるモノが無くなって、中に流し込まれていた白濁が一気にあふれ出てシーツを濡らした。
「……ふ……ッ」
流れ出る感覚に震える姿は、そりゃあもう、劣情を充分に掻き立てる代物だったけど、挿れるのはまだ我慢だ。
「……チャック?」
さっきまでならすぐにでも突き刺してガツガツと犯してた相手が急に何にもしなくなったのだから、不思議に思うのは当たり前のこと。
最後の一回、という言葉を反芻しながら、ボクは言った。
「お風呂に行こう」
「たっだいまー!
あれ、何で窓開けてんだ?」
元気な声が扉を叩いて現れた。
ディーンを先頭に、後ろには女の子たち。やっぱりどこから見てもハーレムだ。
「さっきまでARMの手入れしてたから、オイルの臭いが篭ってさ」
「あー。ほんとだ。ちょっとオイルの臭いがするなあ」
すんすんと鼻を鳴らして確かめるディーン。
さっきまでカモフラージュのためにARMの手入れをしてた甲斐があったというものだ。
それにしても結構ギリギリだったかも。
皆が帰ってくるのが予想してたよりも、かなり早かったし。
上手くいってほっとしてるのはボクも、それからグレッグも同じだろう。
後片付けは大変だったけど、ボクとしては収穫の方が大きかったので問題ない。
女の子たちから預かってた荷物を返し、替わりにおみやげを受け取る。
彼女たちは荷物を持って隣の部屋へ戻り、ディーンだけが残って今日の出来事をボクらに語った。
話を聴きながら、そろそろ臭いも飛んだろう、と窓を閉めているとディーンがごくごく普通に、素朴に、尋ねた。
「それで、グレッグたちは今日はずっと部屋に閉じこもってたのか?」
「まあ、な」
「そんなの体によくないぜッ!
太陽の光を浴びないと良くないんだって、トニーじいちゃんも言ってたし。
だから次はチャックもグレッグも一緒に遊びに行こうな!」
他意がないのは解るんだけど。悪気もないのも知っているけれど。
「……そうだな。確かに、健康に悪そうだ」
「だろッ?じゃあ、今度は皆で遊ぼうぜッ」
「ああ」
折角の二人きりになれる機会を無造作に潰される。
大所帯でああいうことできるときなんてただでさえ少ないのに。
……しかし、これにはボク自身にだって問題があるから起こるのだ。
そこんとこはきちんと謝らないといけない。
「グレッグ」
晩御飯だ、と飛び出していったディーンのあとを追って、部屋を出ようとするグレッグを呼び止める。
「……さっきは、ちょっと、やりすぎちゃってごめん」
言われたとおり、一回で収めたけれどお風呂場でしたとき、きつそうだったし。
「……ん」
グレッグは帽子を引き下げ、そっぽを向いたまま、頷いた。
「まだ2回目だってのに、ひどくしちゃったかなって思って。
だから、ごめん」
グレッグの返事はない。
目深に被った帽子のせいで表情は窺えない。怒って黙ってるのかも、確かめられない。
「それだけ、謝りたかったから」
「そう、か」
ボクの独白に似た懺悔を聞き終わると、あっさり踵を返し、何事もなかったようにディーンを追う。
ボクは、グレッグの後ろ姿を見ながら嘆息した。
辛いとか。痛いとか思わせたりしたくはない。
なのにそう思わせてしまったのなら、それは明らかにボクのミスだ。
ボクがしたいのは。
グレッグが嫌だとかもう止めてなんて思わないくらいにかき乱して、逆にもっとしてとおねだりするように仕込むことだッ!!
それなのに。
あんなセリフを言わせてしまうなんて、なんて情けないんだッ!!
今度こそ、絶対上手くやってやるッ!!とこっそり無許可につけた印(数箇所)の場所を思い起こしながら、誓いを立てた。
騙されてるよ、グレッグさん……
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